アイダーダウンはなぜ高い?高価な理由は独特の羽毛構造にあった!

アイダーダウンはなぜ高い?高価な理由は独特の羽毛構造にあった!

アイスランド産アイダーダックダウンといえば、知る人ぞ知る、羽毛の頂点を極める原料。ヨーロッパの王族や歴代のローマ教皇もアイダーダウンの羽毛布団を愛用してきました。

アイダーダウンを使った羽毛布団の価格は100万円を軽く超え、大手寝具メーカーでは200万円以上の価格帯で販売されています。

「アイダーダウン」の名前は聞いたことがあっても、なぜここまで値段が高いのか、本当にそれだけの価値があるのか、わからない人も多いと思います。

そこで本記事では、アイダーダウンは他の羽毛と何が違うのか、アイダーと保護農家の信頼関係の物語もご紹介しながら、その魅力に迫っていきたいと思います。

「羽毛の宝石」アイダーダウンとは?

「羽毛の宝石」アイダーダウンとは
「羽毛の宝石」と呼ばれるアイダーダウン

メスのアイダーダックが卵を暖めるための巣材に使う、とびきり柔らかい胸の部分の羽毛が「アイダーダウン」です。

アイダーダックは別名を「ホンケワタガモ(本毛綿鴨)」といい、鴨の一種です。学名の「Somateria Mollissima」はラテン語で「非常に柔らかい羽毛」という意味を持ちます。北極圏に生息し、名前からもわかる通り、昔から良質な羽毛の供給源として知られています。

アイダーダウンはなぜ茶色?

白くてふわふわしたイメージのある羽毛ですが、メスのアイダーダックは、褐色から淡褐色の羽毛を持っています。その色合いは環境に溶け込むのに役立ち、保護色として機能します。これにより、繁殖期や子育て中に巣や卵を捕食者から守ることができます。

雄のアイダーダック
オスのアイダーダック
雌のアイダーダック
メスのアイダーダック

極寒で風の強いアイスランドの気候が生んだ特殊な羽毛構造で熱を逃がさない

アイダーダウンは、その独特の羽毛構造で優れた断熱性を有することで知られています。

羽毛の先端が小さなカギ状になっており、その先端にバーブと言われる小さな「かえし」がついています。これは他の羽毛にはないアイダーならではの特徴です。

この特徴のおかげで羽毛と羽毛が強く絡み合い、密な空気ポケットを形成します。この空気ポケットに体温の熱を保存するため、極寒の条件下でも暖かさを維持することができるのです。

北アイスランドのフィヨルド
北アイスランドのフィヨルド

アイダーは北海道よりもはるかに北に位置するアイスランドの海上の島に巣をつくります。

アイスランド北部は寒いだけでなく風が非常に強く、普通の羽毛なら風で舞って飛び散ってしまうのですが、アイダーダウン独特のかぎ状構造により、ダウンどうしが絡み合って飛び散りません。

絡まりの強さで暖かさを逃さないのがアイダーダウンの特徴
絡まりの強さで暖かさを逃さないのがアイダーダウンの特徴

流通量が限られるのは、野生種しか存在しない特別保護動物だから

冬のスナイフェルスネス半島のブレイザフヨルズルフィヨルドの海岸にある小さな漁村スティッキスホルムの港の街並み
ブレイザフヨルズルフィヨルドの海岸にある小さな漁村スティッキスホルムの港

アイスランドの厳しい寒さを乗り越えるための特殊な羽毛構造が、他にない上質な暖かさの理由ですが、それだけ良いダウンなら、他のダックやグースのように養殖してアイダーの数を増やせば良いと考えるかもしれません。

しかし、アイダーダックは1874年にアイスランド政府から特別保護動物に指定されており、家畜化することはできず、すべて野生種です。体から羽毛を直接採取することはもちろん、一般の人は近づくこともできません。

そのため、アイダーの羽毛には厳格な採取方法の制限があります。

1,000年以上続く、地元保護農家とアイダーの信頼関係

羽毛布団に使われる通常のダウンは食肉用水鳥の副産物として採取されますが、アイダーダウンはアイダーの巣から採取されるというのが大きな特徴です。

毎年4~5月の繁殖期になると、メスの親鳥は自らの胸元から抜け落ちたダウンを敷き詰め、北極圏の厳しい寒さから卵を守るための巣作りをします。

アイダーのヒナが大人の鳥まで育ち、再び卵を産むのは10羽中1羽ほど。つまり生存率は10%ほどなのですが、これはアイダーダックの生息地に天敵が多いためです。

繁殖期の2ヶ月間、親鳥が巣を離れるとき、地元の農家の人達が昼も夜も交代で天敵のキツネやミンク、カモメから卵を守ります。

アイスランドのホッキョクギツネ
アイスランドのホッキョクギツネ

無事に卵が孵化すれば、巣に使っていた羽毛は不要になります。天敵から卵を守ってくれたお礼として、不要になった羽毛をいただいているのです。

天敵から卵を守る活動も大変ですが、収穫作業も大変手間がかかります。何日もかけて全て手作業で1つ1つの巣から羽毛を集めるのですが、1つの巣から採取できる羽毛の量はわずか20g。

シングルサイズの羽毛布団を作るのに約1,000gほどの羽毛が必要なことを考えると、1枚の羽毛布団を作るのに50以上の巣を巡り、羽毛を採取する必要があります。

天候にも左右されますが、年間の採取量は2,000〜3,000kg程度が限界で、シングルの羽毛布団に直すと、年間で2,000〜3,000枚程度しか作ることができません。当然、日本に入ってくる量はさらに少なく、大変貴重な原料です。

卵を暖めるアイダーダック
卵を暖めるアイダーダック

人間が信頼できる存在であることを知っているアイダーは、翌年もまた同じ場所に巣を作りに戻ってきます。

アイダーダウン製品を購入する人が増えれば、地元の保護農家の人たちが潤い、結果として多くのアイダーダックが保護されます。

そうして卵から孵ったヒナが親鳥になり、また保護農家の人たちが守る場所へ卵を産みに戻ってくる。驚くことに、ここアイスランドの地では人間と野生動物のサステナブルで理想的な共生関係が、1,000年以上も続いています。

はるか北の大地に思いを馳せて

アイダーダックは平均寿命が15年前後と言われており、2〜3歳から繁殖活動が始まることを考えると、私たちに上質な眠りをもたらすダウンを提供してくれた親鳥は、しばらくはアイスランドの地で生きている可能性が高いのです。そんなことに思いを馳せられるのも、アイダーダウンの魅力です。

一生ものの羽毛布団を、自分へのご褒美に。

目を閉じたままアイダーダウンの塊を手のひらにのせてみると、羽毛がのったことに気がつかないうちに、手のひらがじわっと暖まりはじめます。驚くほど軽いというよりも、まるで重さが存在しないかのよう。この軽量さと保温力がアイダーダウン最大の魅力です。

気軽に購入できる値段ではありませんが、アイダーダウンは10年ぐらいのスパンで適切なメンテナンスをしていけば、50〜100年近く使用することが可能です。

親から子へ、子から孫へ。3世代に渡って受け継ぐことのできるアイダーダウンの羽毛布団は、まさに「一生もの」のおふとん。

100年間の良質な睡眠と健康への投資と考えれば、その値段に見合う価値があることが理解できるのではないでしょうか。

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和雲アイダーモデル